ガントレット、はクリント・イーストウッド監督主演、1977年のアメリカ映画です。 イーストウッドがバリバリのアクションスターだった時代の刑事アクション。

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「ガントレット」はイーストウッド映画である事を忘れないでくれ

ガントレット、はクリント・イーストウッド監督主演、1977年のアメリカ映画です。

イーストウッドがバリバリのアクションスターだった時代の刑事アクション。 

昔はこういうのも作ってたのか!って感じで興味深いと思いますよ。

僕はこの映画が愛しくて堪らないのです。

しかしイーストウッドのフィルモグラフィ的には軽視されている感じもあります。

そりゃイーストウッドは今やアカデミー賞監督、しかも二回も受賞した巨匠ですからね。

近年の監督作品からは、ちょっと想像つかないくらい娯楽に徹した作品です。

ガントレットのストーリーは単純明快。

裁判の証人になる女性を、彼女の出廷を妨害する悪の黒幕やマフィアの襲撃から守ってラスベガスからアリゾナ州フェニックスの裁判所へと護送する、ベン・ショックリー刑事の活躍。 

証人は大学出で実はインテリ、でもやっぱりビッチな高級娼婦のマリー。 

そして、いきなり凄い場面が…

護送開始直後、マフィアに狙われた二人は追撃を振り切ってマリーの自宅に立ち寄ると、今度はそこで何故か警官隊に包囲される…

警官隊は有無を言わさず、一斉射撃!

正に蜂の巣…結局家一軒を崩落させちゃう一斉射撃!

どんだけ撃てば気が済むの~よ!

何とか逃げ出したものの、指名手配された二人は当地の警察に追われマフィアにも狙われる、一難去って又一難。

そんな感じで、随所で繰り広げられるド派手なアクションシーンに退屈する暇がありません。

突っ込み所は結構有りますがそこはそこ、超大作にして且つB級映画的なノリが実に楽しい。

巨匠も若い頃には弾け跳んでたんですね。 

しかし…弾けるばかりでも無いのがガントレット。やっぱりイーストウッド映画なんですよ。 

中々に味わい深い面も有るんです。

例えば音楽。主に地方都市や田舎を舞台したガントレットですが、音楽には都会的なジャズを取り入れているのが印象的です。 

特に見せ場の一つ、殺し屋のヘリコプターに追われるシーン。

二人乗りしたハーレーが土煙り捲き上げて荒野を突っ走る映像と、バックに流れるジャズトランペットの音色の組み合わせは新鮮でした。

ジャズ好き、バイク好きのイーストウッドが楽しそうに仕事してるのが目に浮かんできます。 

更には女好きでもありましたね、イーストウッドさん。 

マリー役のソンドラ・ロックは、実生活では彼の愛人だったそうです。

つまりガントレットにはイーストウッドの好きな物が、てんこ盛りなんですな。

イーストウッドの刑事役ではダーティーハリーが余りも有名ですが、このガントレットのショックリー刑事はダーティーハリーと一味違うキャラを打ち出しました。 

それは…飲んだくれのダメ刑事…ウドの大木(汗)

ショックリーは度胸と腕っ節で危なっかしくも何とかマリーを護り抜きますが、頭の回転は今ひとつ。

自分の置かれた危機的状況も把握出来ない。

それどころかマリーの機転で難を逃れたりする始末。

そんな二人の珍道中?ロードムービー的な面白味も有る。

そこにロマンスが生まれる訳ですよ。

ガントレットは刑事アクション映画の体裁を取っていますが、その実ラブストーリーだと断言しちゃいます。

命を狙われる高級娼婦と酒浸りのしょぼくれ刑事。底辺を這いつくばる二人が、再生を賭けて懸命に生きる物語。

しかし女は強いよなぁ…マリーが、ウドの大木ショックリーをリードする様が微笑ましくもあり、又ホロリとさせる場面もあります。

結婚後は尻に敷かれるだろ、こりゃ。

イーストウッド監督作品では、しばしば女性上位だったり「M」っ気を発揮していますが、ガントレットにもその傾向が見られる訳です。

そして物語は佳境に入り、ここまで防戦する一方だったショックリー達が大反撃に出る!

かと思えば、そうでも無い。 

ここで守りを固めるんです。

裁判所に至る道という道には、街の警官が総動員されて銃を携え待ち構えてる。

そこを突破しなければならない。

それには、防御は最大の攻撃なり?とばかりに守りを固める。

警官隊からの銃撃に備えて防弾の為に鉄板を張り巡らせた大型バスで、ショックリーとマリーは街に乗り込んで行きます。

そこで始まる、一斉射撃!

これが又凄まじ~いのなんの!

銃弾の嵐の中を、のっそのっそと進む大型バス。

その、たった一台のバスに何千発だか何万発だかの銃弾が撃ち込まれる!

鉄板で覆ったとはいえ、バス車内もただ事では済みません。

二人は、互いをかばい合いながら必死にバスを走らせる!

このクライマックスは見ものですよ。 

CGなんて無い時代にここまでやれば、もう一種の芸術の域に達していると言いたいです。

飛び交う銃弾は大変な数なのにも関わらず、結局あんまり人が死んでない。

これは作品全体を通してもそう云えます。残酷な場面も無い。

だから迫力は凄いのですが、安心して見ていられる。

見終わった後の後味も爽やかで大変に宜しい。

そしてふと思い返すと…ショックリーは誰も殺していないんですよ。

まぁ、相手が自爆したってのはありますが…ダーティーハリーとは違って敵を銃撃してはいない。 

ひたすら逃げる、耐える、防御する。

攻撃らしい攻撃はしない。

ここまで専守防衛に徹したアクション映画もちょっと例が無いと思います。

しかし、それで男の強さを描いているのではと思うのです。

この辺りに、自ら監督をしたイーストウッドの本音が表れているのではないかと。

何だかんだでヤッパリイーストウッド格好良いし、アクションは凄い迫力。

そして、ちょっとほっこり脳天気。

そんなガントレットが、僕は大好きなんです。

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